広島大学大学院で取得した教育心理学修士は、私のシステム開発アプローチの核心を形成しています。人間の認知プロセス、学習メカニズム、発達特性への深い理解が、より人間に寄り添ったシステム設計を可能にしています。
専攻分野と研究内容
大学院では「自閉スペクトラム症特性は対話型テキストの読解を阻害するか」というテーマで研究を行いました。一般的に「わかりやすい」とされる対話型テキスト(会話形式の説明文)が、実際には理解を阻害する場合があることを明らかにしました。
主要な発見
診断を受けていないがASD傾向の高い大学生を対象とした研究で、細部への関心が高い傾向があるにもかかわらず、読解成績に差がないことを発見しました。これは、ASD特性があっても、それをうまく活用することで効果的に学習を進められることを示唆しています。
「人はそれぞれの認知特性の特異不得意を活かしながら生活し、独自の方法で課題に取り組んでいる。この理解がより良いシステム設計の基盤となります」
システム開発への応用
認知負荷を考慮したUI設計
研究で得た「人がどこに目を向けやすいか」という知見を活かし、適切な操作を促すメッセージ表示を設計しています。色の使い分けや情報の配置により、認知特性の違いに関わらず使いやすいインターフェースを追求しています。
メッセージデザインの最適化
対話型テキストの問題を踏まえ、メッセージを簡潔にし、視覚的な工夫(色分け、強調表示)を通じて重要な情報を明確に伝える設計を心がけています。複雑な説明よりも、直接的で分かりやすい表現を重視しています。
学習理論の活用
- 段階的な情報提示 - 学習の進行に合わせて段階的に機能を開示するオンボーディング設計
- フィードバック設計 - 適切なタイミングと方法でユーザーに情報を提供するシステム
- 動機づけの仕組み - ユーザーが継続的に使いたくなるゲーミフィケーション要素の導入
- 個別最適化 - ユーザーの習熟度や好みに応じて自動調整される機能
発達心理学からの知見
子どもから大人まで、発達段階に応じた認知能力の違いを理解することで、幅広い年齢層が使えるシステムを設計できます。特に教育系システムでは、この知識が直接的に活かされます。
特別支援教育の現場経験
理論だけでなく、フリースクールでの3年間の実務経験を通じて、多様なニーズを持つ利用者への対応力を身につけました。一人ひとりの特性を見極め、最適なアプローチを見つける能力は、ペルソナ設計やユーザー調査にも活かされています。
エラー設計とユーザー支援
心理学的観点から、人はなぜミスを犯すのか、どのような状況で混乱するのかを理解しています。この知識により、エラーを予防し、発生した際も適切に誘導できるシステム設計が可能です。
コミュニケーション能力
クライアントの真のニーズを引き出し、技術的な内容を分かりやすく説明する能力は、教育心理学で培った傾聴力と説明力によるものです。相手の理解レベルに合わせたコミュニケーションを心がけています。
これからの展望
AI時代においても、人間理解の重要性はますます高まります。技術と人間の架け橋となるシステムを設計し、誰もが技術の恩恵を受けられる社会の実現に貢献していきたいと考えています。
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